【テンプル・バトン】その6-1(真言宗 加藤大周師)
福岡県の高野山真言宗。祖聖大寺の加藤大周と申します。浄土真宗信行寺の神崎修正さんよりバトンをお預かりしまして、僭越ながら「数珠つなぎ法話」をさせて頂きます。
昨今のコロナウイルスの影響と、失われた30年と言われた経済停滞のダブルパンチで日本に黄昏感が広がっています。僕も含めて周りの方々も気持ちが落ち気味でやる気が風前の灯状態でありましたがふと、大黒天の話を思い出した。大黒天は大暗黒天の略で元々はバラモン教の神様でこの世を暗黒世界にする破壊神だ。破壊するなんて最悪な悪魔だ!と当時は思ったけど破壊があるからこそ再生できるという意味だそうだ。
勿論、病で苦しんだり亡くなったり、住む環境が乱されたりして不幸になっている方々の為にもすみやかな終息とご供養をお祈りしております。僕の友人も僕自身も収入の見込みが無く正直苦しい状況ですが今回の出来事で大切に扱うべき物は再生だと感じています。
なぜなら日本は破壊と再生の中でいつも、のし上がってきたからです。
今まで描いてきた未来地図は一気に破れ去り新たな地図を描くときが来たと感じますし、より良く生きれる世界にするための再生にしなければ亡くなられた方々に申し訳ない。大都市が得をする文明が終わり誰一人取り残さない世界を作る。首都集中型の経済構築は地方をないがしろにしてしまう形でもあったけどこれからは地方を取り残さずに共存できるかもしれない。こんな中でも僕たちは生きていかなければいけないし、ご先祖さん達もそうやって生き残ってきて命のバトンを繋いできた。そのDNAを感じて会ったことも無い、遠い過去のご先祖や自分の前世にも想いを馳せる。それもまた供養の形の一つだと思う。
そして仏様や神様を信じる事も大切だけど、自分の力も信じてあげてほしい。
自分と仏を信じる事が本当の信仰だと僕は思います。
僕が伝えたいことは
「悲観しないで。大丈夫これからよくなる。」
ということ。
自然災害や戦争で破壊され世界と比べてあらゆる文明や産業、工業に先を越されていても、いつも爆速で追いつくのが日本のお家芸だ。今は壊れてても最後尾でも必ず追いつくと信じて希望を持つことが大切。
自分の宗派の話で恐縮ですが、真言宗の開祖空海は当時最先端のカルチャーであった密教を中国にて僅か3ヶ月程で習得し同時に薬学、地質学、土木建築工学、天文学、易学、養殖技術、測量、書道や音楽、小説。はたまたキリスト教学など最新の文化体系を持ち帰り日本の伝統文化や神道と混ぜ合わせ日本文化の数百年分の遅れを一気に取り戻した史実もある。色んな教えを逆境の中、伝えてきた各宗祖の生き様やご先祖の生き様に今こそ想いを馳せ真似をしたいとこれ程までに思ったことはないです。宗祖の歴史本など読んで理解しようとせず生き方の真似をして学ぶ。必要が出てきた。学ぶとは「まねぶ」といって真似をすることが近道だと言われていますね。
生き方を体得して本当の気づきが必要な時だと思います。
追記。空海の言葉「人々の心乱れる時、鬼神あらわる」様々な規制の中で心が乱れている時、暴動や災いが起こる。今こそ僧侶はメンタルヘルスに力を入れていきたいですね。
参考文献 安宅和人著「シン・ニホン」
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>テンプルバトンその6-3 小川大心師へ行く(その7へ)つながつながります