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[第三回]仏教の教えを伝えていくことに、決まったやり方はないはず

細川晋輔(ほそかわ・しんすけ)
1979年生まれ。松原泰道の孫。佛教大学卒業後、京都・妙心寺専門道場にて9年間禅修行。東京都世田谷区・龍雲寺住職。花園大学大学院文学研究科仏教学専攻修士課程修了。
臨済宗妙心寺派東京禅センター副センター長。妙心寺派布教師。NHK大河ドラマ『おんな城主直虎』禅宗指導、『麒麟がくる』仏事指導。

ここまでのやり取りは、こちらから御覧ください。

拝復
Amazonのレビュー、気になりますよね。
一生懸命に本を書けば、そんなことは気にならないだろうと思っていたのですが、実際は一生懸命書いたからこそ、気になる自分がおりました。(笑)特に「お坊さんの言うことは、響かないし、信じない」というお言葉には、なかなか考えさせられるものがありました。
ジェーン・スーさんの「批判がくるようになって初めて届いた」という答えに、私も救われました。ありがとうございます。

陽人さんのコメントに一件一件に丁寧にお返事されている姿勢は、本当にすごいことだなと感服しておりました。賛否両方に真摯に受け止められている師の人柄がにじみでていますね。

「仏縁の無い方との初縁を結ぶ布教の大切さ」というのが、今回の陽人さんからのご質問です。それについて前回の続きになってしまうかもしれませんが、大河ドラマ『おんな城主直虎』では、主演の柴咲コウさんが『観音経』を謡うようにお唱えするシーンがありました。『観音経』の中の「世尊偈」という部分です。臨済宗ではお経に節をつけずに同じ音程でお唱えするのですが、ドラマでは作曲家の菅野よう子さんが編曲されて歌にされました。菅野よう子さんの曲に柴咲コウさんの歌声ということで、素晴らしい歌曲となり、たくさんの方に聴いていただくこととなりました。

一方で宗門の中から、「けしからん」という声が私のもとにあったのも事実です。「お経は歌ではない」というのです。しかしながら私には今回のことは、『観音経』というお経がたくさんの方の耳に届くチャンスであると思ったのです。私たちが何万回このお経をお唱えしても、これだけたくさんの方に聴いていただくことは難しいものがあります。このドラマをご覧になってお経に出会い興味を持っていただく。そして、そのお経に書いてある内容に興味を持たれた方に、その意味を伝えていくことこそ私たちの役目のはずです。仏教の教えを伝えていくことに、決まったやり方はないはずです。

臨済宗の白隠禅師は、当時の流行であった謡曲に禅の奥旨を込められてお経にされました。また、たくさんの禅画を描かれ、たくさんの信者さんへの布教のために渡されていたと言われています。それは、一人でも多くの方に禅の教えを届けたい。そして、与えられた人生を幸せに生きて欲しいという願いであったと思うのです。

私も及ばずながら、その願いを大切にしております。達磨大師がインドから中国に渡られて禅を布教されたのは、「無意識の意識」と言われています。何らかの見返りを求めることなく布教を行うことが、私の人生の目標です。

とても深い質問で、勉強になりました。同じ質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?ダメというルールはなかったですよね?

暦の上では春になりました。まだまだ寒い日が続きます。くれぐれもご自愛くださいませ。
頓首謹白

 

色々と考えたのですが、私は「地域のお寺」というものを大切にしております。「ここにこのお寺があってよかった」と思っていただけるようにする。これが私の原点でもあり、終着点でもあるのです。

敬具