[第九回]釈→小出さん「時代に抗えないとしても、そして・・・」

釈徹宗(しゃく・てっしゅう)

前回までの書簡はこちらを御覧ください。

 

 

ええ、おっしゃる通り、「家族運営や世襲制にこだわらないお寺が増えれば、もっと仏法の核の部分が伝わりやすくなる」「地域密着型でなくてもよい」と思います。というよりも、もはやその方向へと進まざるを得ないお寺が増えている、ことを感じています。

 

■過疎地におけるお寺

過疎化によって、寺院を維持することが困難な地域は増えています。この現象はすでに昭和の時代から報告されていました。そういうお寺がかろうじて世襲制によって命脈をつないできました。現場に足を運ぶと、それらのお寺は「世襲でなければ大半は消えてしまうだろう」という印象を受けます。往復書簡の(その3)でも少し言及しましたが、「テラ未来予想図」ではそういうお寺へのエールも続けていきたいと思います。

もちろん、家族運営・世襲制・寺檀制度・地域密着がいかに仏法をそこねてきたのかは、私は身にしみて知っています。そして、ずっとこのことは指摘され続け、批判され続けてきました。「日本仏教をダメにしたのは寺檀制度だ」「今の寺の在り方を変えない限り、日本仏教はニセモノだ」「そもそも僧侶が家庭をもっていること自体大きな間違いだ」と、言われ続けてきたんですよ。

そして、もはやその形態は急速に崩れつつあるわけです。ですから、小出さんが言うような「世襲型ではない」「地域密着型ではない」方向へと動いています。旧態タイプのお寺は難局に直面しています。 もう寺檀制度批判にも耐えられない状況です。むしろ、近年出てきた「お寺と地域をソーシャルキャピタルと見ていく」みたいに、崩れつつある寺檀制度に新しい意味を見出していく方が良いのかもしれません。

このような事態は、日本社会全体の事情ですので、個人の努力ではいかんともしがたいわけです。廃寺を避けることができないお寺も多いでしょう。まさに仏教が説く通りです。諸行無常です。役割を終えたお寺が消えて行く。でも、たとえみすみす消えて行くとわかっていても、わずか一年でも半年でも消滅を先延ばししようと工夫する人たちに、せめて声援だけでも送りたいのです。

 

■維持・存続が困難なお寺

過疎地寺院の問題について、各宗派が実態調査や対応部署設立などに乗りだしています。浄土宗や浄土真宗本願寺派などは比較的早くから着手してきたといえるでしょう。そのような動きも含めて、過疎化が進む地域におけるお寺の維持・存続について、いくつか目につく図式を列挙してみます。

 

(1)一人の住職が複数の寺院を担当する
これについては、宗派マターの部分もあります。宗派の制度変更や支援が必要です。すでに天台宗や曹洞宗などは、兼務住職の宗費免除や軽減措置を始めています。これから他の宗派でも取り組みが行われると思われます。

 

(2)廃寺や統合を行う
日本各地で廃寺となるお寺が出ています。廃寺に比べると、寺院統合の事例は数が少ないと思います。しかし、それを行ったところもあるようです。

私の知る例で、本願寺派のお寺と大谷派のお寺がひとつになったケースがあります。もともとひとつのムラに二ケ寺(一方は本願寺派、他方は大谷派)あったのですが、二ケ寺の維持が困難になって、大谷派の寺院として統合したそうです。かなりめずらしい事例ではないでしょうか。

寺院の統廃合に関しても、宗派がフォローすべき部分があります。臨済宗妙心寺派や浄土真宗本願寺派では、その手続きの支援や費用の助成などを行っています。

 

(3)サテライト寺院の開設
限界集落にあるお寺を維持・存続させるために、都市部に支坊を開くところもあります。たとえば、島根県や高知県にあるお寺が京都や大阪にサテライト寺院をもうける、という事例があります。東京に支坊を開くお寺もあります。

 

(4)寺業に着手する
宿坊を開くお寺もあれば、ソーシャルビジネスを起業するお寺もあります。あるいは、多種多様な集いを開催することによって、多地域の人たちに来てもらう取り組みもあります。さまざまな取り組みで、過疎地にあるお寺の維持・存続を目指しています。

 

(5)“お寺をやりたい人”を探す
臨済宗妙心寺派では、「第二の人生」プロジェクトを立ち上げ、中高年者を対象とした僧侶人材発掘に取り組んでいます。年金収入が見込める中高年僧侶を、経済基盤が乏しい寺院へとつなぐプロジェクトです。

そういえば、跡継ぎがいない商店と、起業したい若者をつなぐ活動をしているNPOがあるそうです。聞いた話なので、少し不確かな情報なのですが。たとえば「長年続いてきたが、もう継ぐ人はいないために閉めようと考えていつ畳屋さん」と、「畳屋さんをやってみたいと考えているものの、自己資金も人脈も顧客もない若者」をコーディネートするそうです。成功例もあるとのことです。臨済宗妙心寺派の「第二の人生」プロジェクトもこれに似た構図ですよね。

 

■まずは“都市におけるお寺の動向”から

実は“ムラ型のお寺”“旧態タイプ寺院”“特定地域型の寺院運営”による取り組みとして「むつみ庵」などを取り上げ、次に“都市におけるお寺の新しい動向”へとお話を進めようと思っていました。「都市部での動き」として、人口が集中しているような都市部で、新しいお寺が生まれています。都市開教型寺院です。こちらはまさに「世襲型ではない」「地域密着型ではない」というタイプの典型だと言えるでしょう。せっかく小出さんがそちらの話をふってくれたので、前者の方は後回しにして、後者へとお話を移行しましょう。

ぜひ、小出さんがよくご存知の事例をご紹介ください。