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井戸端コラム

私の伝える道(江田智昭)

江田智昭
(仏教伝道協会)

TwitterやInstagramにお寺の掲示板標語の写真をあげてもらって、「お寺の掲示板大賞」をやろう。これを思いついたのは今年の4月のことでした。

http://www.bdk.or.jp/kagayake2018/

その場の思い付きの企画ですから、当然予算も宣伝広告費もゼロ。そんな企画が、朝日新聞、Yahoo!ニュース、テレビのニュース情報番組、さらには中国・台湾のメディアなど様々なところで取り上げられました。

また、10月にはダイヤモンドオンラインで注目の「お寺の掲示板」を紹介する1か月間毎日連載という企画もありました。(この連載は11月以降も好評につき週1回という形で続いています)

https://diamond.jp/category/s-templeBB

この連載のコンセプトは、「朝の満員電車に乗っているサラリーマンにスマホで気軽に仏教に触れてもらう」というもの。1か月間、お寺の掲示板に載っている「お経のことば」、「芸能人の言葉」、「人気曲の歌詞」、「ただ韻を踏んでるだけのダジャレ」などを仏教的に説明していきました。

毎日が締め切りの綱渡り連載。当然他の仕事もたくさんあるわけで、あまりの忙しさにコラムを作った本人がほとんど中身を覚えていない・・・という壮絶な連載でした。

これらのコラムは毎日Yahoo!ニュースなどの媒体にも転載され、そこに寄せられた感想コメントはいままで数百に及びます。好意的な反応から批判、罵詈雑言までさまざまなものがありましたが、ネットのカオスのど真ん中に自分の法話が投げ込まれるとどのような反応が起きるのかがよくわかりました。

また、ダイヤモンドオンラインは仏教とは全く無縁の媒体ですが、毎日連載していると読者がつくようになり、1か月間の全体のページビュー数は約30万。「いいね」のランキングで1位をとったこともありました。

1位を獲得したコラムは「仏様の教えは鏡である」というテーマの話で日蓮や中国の僧侶の善導のことばを引用したごくごくオーソドックスなものでした。

https://diamond.jp/articles/-/183748

このとき気づいたのが、「仏さまの教えを聞いてもらうための工夫の大切さ」です。これがなぜ1位をとったかというと、「言っていることではなく、やっていることが本人の正体」という掲示板標語にかなりのインパクトがあったからです。

この掲示板標語があったからこそ、わたしの拙いコラムを読んでもらえて、読者のみなさんの共感が得られたわけです。この掲示板の力がなければ、おそらくわたしのコラムは多くの人に読まれることも共感を得ることもできなかったでしょう。

仏教を伝える手段は無数にあります。私は2011年から2017年までドイツのデュッセルドルフにあるお寺に勤めていましたが、ドイツに行くときに父から数百の法話(お説教)の音源が入ったUSBスティックを渡され、それをドイツでよく聞いていました。それらのお説教はどれも有難いものでしたが、お寺に来ない人たちには永遠に聞いてもらうことができませんし、そのままの形ではいまのサラリーマンや若いひとたちには伝わらないと思われるものばかりでした。結局、聞いてもらうためには何らかの工夫が必要となるのです。

「お寺の掲示板大賞」はその工夫のひとつにすぎません。これ以外にも仏教に触れてもらう効果的な手段が絶対にたくさんあるはずです。それらを常に模索し続けたいとわたしは思っています。